カゴメアイス

これはパイロクロア酸化物Dy2Ti2O7参考文献)を舞台とした面白いスピン系の話です。

パイロクロア酸化物の構造はCd2Re2O7の超伝導においても示してありますが、こちらはDy/Cdサイトに注目します。下図左にはDy原子を黒球で、これを繋ぐ酸素原子を水色球で示してあります。ここからDy原子のみを取り出すと下図右のように、Cd2Re2O7のRe格子の場合と同様にパイロクロア格子が現れます。

Dy2Ti2O7ではDy3+イオンが局在性の強いf電子からくる大きな磁気モーメント(10ボーアマグネトン)を持っています。一方、Ti4+にはd電子がいないので、Cd2Re2O7のように伝導電子は存在せず、ばりばりの絶縁体です。よって、ここで問題にするのはDyスピンの自由度であり、このパイロクロア格子上のスピン系が低温で如何にエントロピーを放出して、どのような基底状態に落ち着くかに興味が持たれます。

さて、スピン系の秩序化に重要なのはスピンの異方性とスピン間の相互作用です。Dy3+の場合、スピンの異方性は極めて大きくイジングスピン、つまり、上向き・下向きの2つの状態しか取れません。また、その向きはDy四面体の中心かその反対向きを取ることがわかっています。一方、最近接スピン間の有効的な磁気相互作用は強磁性的でその大きさは約1Kと見積もられています。

世の中には賢い人がいて、このスピン系を氷の構造と関係付けて議論しました。