PPMS磁場トラブルについて
PPMSの磁場トラブルについて、10月17日にQD JapanのDirectorであるJohn MacArthur氏から説明がありました。彼とは京大時代からの顔見知りで、信頼の出来る人物だと思います。当方のmagnet power supplyを米国QDで調べた結果、ICボードにのっているチップ(U32 precision voltage reference component)の不具合によるものと判明しました。このICチップは通常、DA変換のために2.5Vの基準電圧を発生していますが、何らかの異常でこれが約1.4Vに下がっていました。よって、ある磁場分の電流を流したつもりでも実際には約6割しか流れていなかったことになります。このチップは決して特殊なものではなく、多くの電子機器に用いられているそうで、極めて信頼性の高いものだそうですが、なぜこれが狂ってしまったのかは謎です。ちなみにQDはこれまでこのような問題は起こっておらず、"extremely rare "だと強調しています。MacArthurも他のPPMSではあり得ないと主張していましたが、果たしてどうでしょうか。現在の磁場電源の大きな問題は、この一つのチップを電流供給とチェックの両方に使っていることです。つまり、チップがおかしくなればチェック機構は働きません。
以上をふまえてQDは以下の対応を取るそうです。
- 簡便に磁場校正をするためにホール素子(安物のようだが)をのせたパックを供給する(有償か無償かは知りません)。
- magnet power supplyを交換する。新しい電源では電流セットと読み取りに別々の電圧標準を使用する。14/16Tマグネットに対しては従来の最大出力を100Aからパワーアップして120Aとし、余裕を持たせる。
QDのCOOであるGreg DeGeller氏からの手紙には最後に、"We deeply regret any impacts this situation has had on Tokyo University's research results."とありました。我々のような非物理屋にはQDのプロダクトは非常に重要であり、研究の大きな推進力となっています。QDには今後ともますますの貢献をお願いしたいと思います。