国際会議の四方山話
国際会議の四方山話
久しぶりの台湾。2016年9月6日火曜の朝、羽田を発って3時間後には台北に着く。毎度のことながらとても近い。今回はずっと参加を続けているHighly Frustrated Magnetism (HFM)というシリーズの国際会議に出席します。一応、プログラム委員になっているけど、会議でのお役目は座長だけ。ついでに台湾国立大学化学のRu-Shi Liu教授を訪ねてセミナーをする。日本からはたくさんの顔見知りが一緒です。みんなでしっかり勉強して美味しいものをたくさん食べましょう。
夕方、会場の台湾大学へ行き、welcome partyで多くの友人と会う。懐かしい顔や若い人と話をして盛り上がった後、みんなで中山駅の近くの寧夏夜市に行く。外は時々雨が降って実に蒸し暑い。様々な小さなお店が並んだ昔の夏祭りのような通りが続き、八角と臭豆腐の強烈な匂いで頭がクラクラしてくる。マンゴーの切り身を35で買って食べたが美味しかった。学生さんに無理矢理やってもらった「パチンコ」は妙に長続きして面白い。
水曜日の朝から会議が始まる。その前に朝食を求めて(ホテルにレストランはない)歩き回り、永和豆漿大王という台湾的オープンキッチンにて、揚げパン入り豆乳お粥を食す。悪くはないが明日はやめよう。会議は広くて立派な大学の国際会議場に250人が集まって始まり、和やかな雰囲気のうちにマニアックな「スピンの氷」の話が続く。これもオーガナイザーのJason君のユニークな個性のおかげか。お昼は近くのオープンキッチンのお店で海鮮ラーメンを頂く。あっさり味で100と安い。悲劇は午後最初のトークが終わろうかという時に起こった。いきなり会場の照明が落ちる。見事な停電である。会場は地下なので非常灯のみ。すぐに復帰するかと思いきや、Jasonが街の区画全域での停電であることを告げる。悪くすると何時間もかかるかもしれない。10-20分?後(感覚的には30分だったが)、Jasonが会議の長期中断をアナウンスしようとした瞬間に灯りが戻る。ということで短い悲劇は安堵の笑いに包まれて終わりました。
夜は台北に来る前にRu-Shiさんに頼んで予約してもらったレストラン「女娘的店」に行く。10名の予定が15名に膨らんだが、一緒に行く予定だったGoranは置き去りにしてしまった。ごめん。さて、ここ、昔ながらの台湾料理が食べれると10年前のガイドブックお勧めのお店。名前が何だか怪しそうなのも気に入ったが、娘は母の意味らしく(ややこしい)、要するに台湾のおっかさん料理です。その名の通り、強そうなおかあさんが料理を勧めてくれて、どのお皿も美味しかった。竹の筒に入った海老のスープやたくさんの炒め物にトンポーロウ。中国本土の料理と違って油が少なめで味付けは繊細。気に入りました。みんなでビールを相当飲んで結構な量を食べたが、1人600と驚くべき安さだった。是非また行きたいものです。
木曜の朝、ホテル近くのスタバにて朝食中。コーヒーとサンドイッチを探し求めて辿り着いたスタバは閑散としていて落ち着く。クロワッサンハムサンドに甘いチーズが挟んであることとコーヒーの味が少し落ちるような気もするが気のせいだろう。徐々に交通量の増す交差点を眺めながら、さて明日の朝食はと思いを馳せています。お昼は刀裂麺。入り口で親父が削っているが、見事に太さがバラバラ。でも、トマトの入った黒いスープもうどんのような麺もいけます。ちなみにお値段は大盛りで130TWD。
午後はポスターとバンケットをパスして、台湾大学化学のRu-Shi Liuを訪問する。彼はLEDの開発から様々な材料研究を行っている大変アクティブな人です。昨日まで中国で会議、このあとはシンガポールに行くらしい。たまに戻ると忙しくて昨日は徹夜だったと言ってた。毎日の睡眠時間は4時間だって、信じられないバイタリティだ。研究室には20名以上の学生がいて、極めてシステマティックな指導体制でやっている。段階的に学生を教育しレポートを書かせてコメントを返す、というふうに。確かにそれだけの人数の学生を使って成果を上げるには不可欠なことなのだろう。見習うべきところだ。セミナーの後、何人かの教授や学生に会い、消耗して夜は「万有全涮羊肉」というお店に連れて行ってもらう。土砂降りの雨の中、渋滞に喘ぎながら走っていたタクシーが止まる。何とガス欠らしい。停電といいガス欠いい、台湾はなかなか面白い。別のタクシーに乗り移り、中国風しゃぶしゃぶ店に到着。たくさんの肉や野菜を注文して鍋に突っ込んで食べます。臭豆腐はサービスなので食べるかと聞かれ躊躇していると、俺は好きだから頼もうという。と、例の強烈な匂いが皿にのって現れる。ちなみにウィキではこの匂いを糞便臭と表現している。仕方なく、端っこを少し食べたが、味は強くなく、鼻を抜ける糞便の匂いがなかなかのものである。好きと宣った相棒は全く食べる気配を見せず、最後には横に押しやってしまった。ははは、きっと嫌いなのだろう。
お寺を出て周りを歩く。この辺りは少し変だ。汚い店が並んでいるのは同じだが、例のオープンキッチンレストランが並ぶ歩道でお姉さんが話しかけてくる。ふむ昼前だというのに。一周して立ち去ろうとすると、「千立茗茶」という小さなお茶屋さんの前を通り、何となく心惹かれて入ってみる。 中国でもそうだったが、長い時間をかけて試飲が始まる。高山の阿里山烏龍茶で、茶畑の高度が上がる程、値段も上がる。安い方から試飲を始めるが、一度に6回飲むということで、小さなカップに次から次へと注いでくれる。甘みがあって美味しいのだが、さすがに飽きてきて、中腹で終わる。お店のおじさんとおばさんがiPhone片手に奇妙な日本語を聞かせてくれる。たまたま入ったお店だったが日本人のお客は多いそうだ。たっぷり30分もかけてもらったお礼に中間を150g、800で買わせて頂きました。お昼は三越の鼎泰豊を目指すが行列を見て諦め、軽く炸醤麺を食べてから午後のセッションへ。座長を仰せつかったセッションはカゴメカゴメで盛り上がる。時間が長くてしんどかったが、有意義な時間となりました。
土曜は朝からT先生のありがたいお話に始まり、午後は台北101にエクスカーションだ。夜はJason dinnerに呼ばれている。よく分からないが、今後の会議予定を決める国際アドバイザリーの会議と合わせて、もう1つa relaxed tableを作るから来いとのこと。土砂降りの雨の中、なかなか来ないタクシーを待ち、大渋滞に巻き込まれて遅刻。松山空港の近くにある「福邸」というお店、何でもprivate restaurantらしく、店の看板もない。果たしてこれがどういう意味かは分からないが、意外なことに正当なフレンチでした。味付けは少々変わっていて台湾フレンチと呼ぶべきかも。ぜんぜん悪くない料理の数々でした。アドバイザリー会議とは別室に8名でテーブルを囲み、ワインで酔っ払って盛り上がる。が、早口の英語が飛び交って付いていけない。場所柄、アジアの話が多いので時々、日本はどうだと振られると困ってしまう。隣の部屋のテーブルは深刻な雰囲気が漂っているが、こっちはrelaxedで楽しい。時々、Jasonが息抜きにやってくる。3時間経ってわれわれが帰ろうという時にも隣はまだまだ続いていました。御愁傷様。その後、イギリス沖縄人にリヨンオックスフォード人と3人で大学近くのアイリッシュバーに梯子する。臭豆腐の匂いが漂う路地のテラスでギネスを酌み交わし、気が付いたら深夜も1時になっていた。
薬膳ショックがようやく収まってもうすぐ羽田に到着です。今回の台北は知り合いが大勢いてなかなか楽しい会議でした。次回のHFMは2年後にサンフランシスコ。その次はなぜか1年後の2019に上海が入り込み、その次は2021にスイスかフランスとなるようです(正確ではないかもしれないので注意)。順番的にはその次の2023は日本になるかも。いずれにせよ、フラストレーションの世界はまだまだ続きそうです。本日、主催者の1人である台湾人と韓国人に中国人から届いたメールではHFMのアジア版を作ろうという話も出ているそうで。ふーむ、如何したものか?そうそう、最後になりましたが、今回の会議で見事にポスター賞を受賞された嶽山先生、おめでとうございます。ご褒美をもらうのはいくつになってもいいものですね。では、また、どこかで。Z
台北でフラストレーション
2016年9月19日月曜日