Seminar
Seminar
日時:2017年7月10日(月) 午後4:00 ~ 5:00
場所:物性研究所本館 6階 A615
講師 : 工藤一貴(岡山大学異分野基礎科学研究所)
題目: 遷移金属ニクタイド、カルコゲナイド超伝導体の物質開発
要旨:
私たちは、遷移金属ニクタイドおよびカルコゲナイドの超伝導体開発を、ニクトゲンとカルコゲンの化学、結晶構造の対称性、局所構造に着目し、進めている。具体的なテーマは、(1) 化学結合の形成と切断、(2) 配位多面体の設計、(3) アニオン分子層の設計、(4) 結晶構造の対称性を利用した新奇電子対の探索、(5) ドーパント周りの局所構造解析の5つである。それらの結果、例えば、(1)では、天然鉱物カラベラス鉱AuTe2において、Te2ダイマーを化学ドープによって切断すると超伝導が発現することを見出した。(2)と(3)では、それぞれ、共有結合性のスペーサー層を持つ初の鉄系超伝導体Ca10(Pt4As8)(Fe2-xPtxAs2)5、分子をスペーサー層として含む初の鉄系超伝導体Ca1-xLaxFeAs2を発見し、鉄系超伝導体の物質開発の幅を広げた。(4)では、ハニカム構造を持つ新超伝導体SrPtAsを報告した。この化合物は、カイラルd波の超伝導状態を示す有力な候補と考えられている。(5)では、ドーパントの周りでのみTc = 49 Kの高温超伝導を示すCa1-xPrxFe2As2において、Pr周りの局所構造を蛍光X線ホログラフィーで可視化し、高温超伝導が生じる原因を調べた。その知見を利用し、新しい高温超伝導物質の創成に挑戦している。セミナーでは、これらの例を挙げながら、超伝導体開発に対する私たちのアプローチの概要について述べたい。
第11回 物質・物性セミナー
2017/06/05