最近よく使われているQuantum Design(QD)社のPhysical Property Measurement System (PPMS)ですが、当研究室の14T仕様のPPMSに大トラブルが発生して困っています。平成17年6月末に磁場コントローラーが不調となり交換したところ、なんとそれまでの磁場中測定データが大きく変わってしましました。原因を調べると驚くべきことに(情けないことに)それまでの磁場の値が表示されていた数値の約6割であったことが判明しました。つまり14Tだと思っていた磁場が実際には8Tしか出ていなかったのです。このために特に最近やっているβパイロクロア酸化物の超伝導に関する磁場中抵抗および比熱のデータがすべて没となりました。お恥ずかしい話ですが、以下の4報の論文のデータを修正する必要があり、今、erratumを書いてます。誠に申し訳ございません。
J. Phys. Soc. Jpn, 74(6) (2005) 1682-1685.
J. Phys. Soc. Jpn: 74(4) (2005) 1255-1262.J. Phys. Soc. Jpn: 73(7) (2004) 1651-1654. → erratum
J. Phys. Soc. Jpn: 73(4) (2004) 819-821.
J. Phys. Soc. Jpn: 73(7) (2004) 1651-1654. → retraction
このトラブルの原因はもちろんちゃんと自分で磁場校正をしなかった我々の責任ですが、QDの方でも現在原因究明を行っています。磁場がおかしくなったと思われる時期以来、計2回の磁場コントローラーの不調があり、QDが調整または交換をしました。しかし、その前後のデータを調べると磁場が変化していないことがわかりました。今回3回目の修理を行った直後に磁場が戻ったことになります。QDはその都度、超電導磁石の電流値をチェックしているようですが、なぜ、磁場異常に気が付かなかったのか謎です。
PPMSをお使いの皆さんにも是非、磁場のチェックをお勧めします。こちらでは現在はPdの標準試料の磁化を測って磁場校正をしていますが、これも結構面倒なので、高磁場で使えるホール素子(東洋テクニカ、BHA-921)を教えてもらって購入し常時チェックする体制を整えようと思っています。