Seminar
Seminar
日時:2017年7月25日(火) 午前11:00 ~ 12:00
場所:物性研究所本館 6階 第1会議室
講師 : 石渡晋太郎(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻、JST-PRESTO)
題目: 擬1次元構造をもつ新奇ペロブスカイト型銅酸化物の高圧合成
要旨:
銅酸化物高温超伝導体の発見から30年を経て、強相関物質としての3d遷移金属酸化物の新規開拓は一段落したように見える。特に最近10年は、4d・5d遷移金属酸化物や、鉄ヒ素系超伝導体・トポロジカル半金属・原子層物質などの非酸化物の開発が盛んに行われてきた。3d遷移金属酸化物が強い電子相関に支配された多彩な量子相を示すのに対し、これらの系はp電子のもつ高い移動度やスピン軌道相互作用に支配された興味深い物性を示す。我々は、この両者の特徴を併せもつ新物質・新物性の開拓を進めるべく、d-p混成の強い3d遷移金属酸化物と、磁気転移や構造転移を示すp電子系化合物の合成を進めてきた。
本セミナーでは、磁気転移や構造転移とカップルした特異な輸送現象を示すp電子系ディラック物質(EuMnBi2[1]、MoTe2[2])を簡単に紹介した後、最近高圧合成により得られたペロブスカイト型銅酸化物PrCuO3の構造と物性を詳しく紹介する[3]。この系では、Cuイオンが2価に近い状態にあるためにCuO6八面体に大きなヤーン・テラー歪みが生じており、平面4配位となったCuO4の1次元格子が形成されている。越智・有田らによる第一原理計算から、PrCuO3における特異な電子状態が、Cu 3dとO 2pに加えてPr 4f軌道を巻き込んだd-p-f混成に由来することが明らかとなった。また、この系の1次元的なCu-O鎖構造と、高温超伝導体の母物質である無限層ペロブスカイトSrCuO2におけるCuO2面との間に、密接な関係がある点も興味深い。
[1] H. Masuda, H. Sakai, S.I. et al., Science Adv. 2, e1501117 (2016).
[2] H. Sakai, S.I. et al., Science Adv. 2, e1601378 (2016).
[3] M. Ito, S.I. et al., to be submitted.
第12回 物質・物性セミナー
2017/06/03